J、AX 5デイズ第三夜 with 9mm Parabellum Bullet

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▲9mm Parabellum Bullet
三番目の熱帯夜を迎えた渋谷AX。午後6時36分、フロアが徐々に埋まりつつある頃、バックステージで鳴り響いていたのは“これが最終作?”という噂のミニストリーの新譜。masasucksと9mm Parabellum Bulletの菅原卓郎は、その轟音が漂うなかで申し合わせたかのように歯磨きをしていたりする。歯はミュージシャンにとっても命、かもしれない。

そんなことはともかく、10周年を迎えたJへの第三の刺客、9mm Parabellum Bulletのステージは強烈だった。『MOZAIKU NIGHT』での対談時の印象は“シャイで謙虚な4人組”。しかし、いざステージに上がれば、彼らは“抑制不能の衝動型バンド”へと一変する。明らかに戦闘モード。“豹変”という言葉はまさにこういうことを指すのだな、と僕は思わずにいられなかった。

激烈な音楽、重戦車型バンドのライヴには過剰なほどに免疫のできている僕だが、彼らの面白さは、
▲9mm Parabellum Bullet
勢いまかせのようでありながら実は踏ん張りが利いていて、整合感があるのに常に何かが壊れているかのような摩訶不思議なバランスにある。弾いていたギターを放り出して(というか、きちんとギター・スタンドに立てかけて)、いきなり踊りだすギタリスト。膝上ぐらいの高さに設置されたマイクに向かってコーラスするベーシスト。ドラムを壊そうとしてるんじゃないかと思えるほどに叩きまくるドラマーに、曲によってはせつないオンナゴコロを歌っていたりもするヴォーカリスト。こんなバンド、観たことがない。

彼らのライヴに触れたことがない人たち、触れてみたいのはやまやまだがなかなかチケットが取れないという人たちには、10月10日に発売を迎えた正式なメジャー・デビュー作、『Discommunication e.p.』を聴いてみて欲しい。なにしろこの作品、表題曲+35分間のライヴ音源という驚異的な成り立ちをしているのだ。しかも“9ミリ価格”ということで、税込み999円。なんだかすべてが掟破りで楽しすぎる。

しかし、掟破りの先駆者がJであることは改めて言うまでもないはずだし、9mm Parabellum Bulletの面々は、彼のそんな部分にも惹かれているに違いない。もちろんそれは僕にとっても同じことだ。

放火魔が用意した今夜のメイン・ディッシュは、2002年11月27日にリリースされた『Unstoppable Drive』の収録曲たち。前作にあたる『BLOOD MUZIK』の制作プロセスでは、自分自身と向き合うことに集中していたJ。そこでひとつの理想を具現化することに成功し、それに対する共鳴を得たことで、意識が明らかに外へと向かうようになった。そんな変化を象徴しているのが、この『Unstoppable Drive』という作品だ。

午後7時48分、暗転した場内に鳴り響くのは、同作の冒頭に収められていた邪悪な行進曲、「Diablo March I」。メンバーたちが配置につくと、Jは軽い足どりでステージに現れ、「行くぜ!」と宣戦布告。すぐさま「Super High」が炸裂し、まさに最高潮のレヴェルからライヴは転がり始めた。

前日も、前々日にも感じたことだが、Jの声の響きが当時とはまるで違う。“あの頃”の作品を改めて聴きなおしてみたうえで“今”の彼のライヴに触れると、その違いがよくわかる。声自体が深く、太く、強い。だからこそ聴こえてくる言葉の重みが違うし、説得力が違う。Jが、揺らぐこともブレることもなくまっすぐな道を歩み続けていられるのは、彼自身がそんなふうにアップ・グレードを続けているからでもあるはずなのだ。

止まらない衝動。誰にも止められない欲望。そういったものが渦巻いていた『Unstoppable Drive』の曲たちが繰り出されるなかで、僕の記憶は、このアルバムの発売から約40日後にあたる2003年1月4日に戻っていた。場面はもちろん日本武道館。日本を代表する由緒正しいこのアリーナでのスタンディング形式のライヴは、今でこそアタリマエになりつつあるが、当時は異例中の異例だった。それをいち早く実践してしまったのがこの男だったのだ。しかしまあ、「せっかくスタンディングなんだから」とかなんとか言いながら、スタンドの関係者席ではなくアリーナの群集のなかで“メモを取りながらアタマを振っていた”僕もまた、かなり普通じゃないんだろうが。

「もう3日目なんで疲労がたまってる人も見え隠れ……」

フロアを見渡しながらそう挑発するJに、反発の声が飛ぶ。そして「そんなことねえよな!」と呼びかけると、場内には熱い歓声が渦巻き、彼はこう言葉を続けた。

「俺たちには休息してる時間もないし、とことんロックし続けるだけだろ?」

こんな発言を照れくさがらずに吐くことができて、しかも不自然さを感じさせない人物というのが果たしてどれだけいるだろうか? で、そうした言葉がセリフじゃなく本心として響いてくるからこそ、僕らも同調の雄叫びをあげることができるのだ。そうして始まった「No time to lose」から、アンコール最後の「BURN OUT」に至るまでの“途切れない熱”は、まさに圧巻だった。もちろんそれは、ステージ上のJとメンバーたちについてだけではなく、フロアでひしめき合いながら蒸気を放出し続けていたオーディエンスに関しても同じことだ。

で、ふと思った。あそこで生まれる熱がクルマや電化製品を動かすことはなくても、新しい流れを生み出すエネルギーになることはあり得るはずだ、と。そしてもうひとつ僕が感じたこと。それは、“今”の彼を、“今”のみんなと一緒に武道館で観てみたいということだった。

増田勇一

9mm Parabellum Bulletからのメッセージ
https://www.barks.jp/watch/?id=1000020012



<J SHIBUYA-AX 5 Days –ALL of URGE-10th Anniversary SPECIAL LIVE>
2007年10月5日(金)

[SET LIST]
  • Super High

  • Sixteen

  • REBEL tonight

  • OVER DRIVE

  • Go with the Devil

  • APTITUDE TEST

  • Graceful day

  • Tomorrow

  • No time to lose

  • Drivin' Now

  • PYROMANIA

  • Feel Your Blaze

  • -encore-
  • Go Charge

  • BURN OUT
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